実質的支配者リスト制度

制度の概要

実質的支配者リスト(実質的支配者情報一覧)とは、株式会社の実質的支配者について、その要件である議決権の保有に関する情報を記載した書面をいいます。

そして、このリストに必要書類を添付して法務局(商業登記所)に提出すると、登記官から、そのリストに認証文を付した写しを交付してくれます。
登記官のお墨付きとなったリストは、金融機関などに提出することができます。

実質的支配者とは

実質的支配者とは、法人の議決権の総数の4分の1を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人等をいいます。

利用料

無料です。
ただし、郵送で請求する場合には、郵送料が必要になります。

利用することができる法人

この制度を利用することができる法人は、資本多数決法人である株式会社(特例有限会社を含む。)です。

資本多数決法人以外の法人(持分会社や一般社団法人、一般財団法人等)は、対象外となっています。

対象となる実質的支配者

本制度の対象となる実質的支配者とは、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する者になります。

(1)会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人
(2)上記の(1)に該当する者がいない場合は、会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人

ただし、上記のいずれの場合も、該当する者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合には、これらに該当しないことになります。

なお、ここでいう「自然人」には、法人が該当する場合もあります。
具体的には、国、地方公共団体、人格のない社団又は財団、上場会社等及びその子会社です。

手続の流れ

実質的支配者リストの写しの交付を受けるためには、実質的支配者情報一覧の保管及び交付の申出をする必要があります。
具体的な手続きの流れについては次のとおりです。

会社の代表者又は代理人による申出

1 実質的支配者リストの作成
   
2 申出書の作成
   
3 添付書面を用意
   
4 申出書・実質的支配者リスト・添付書面の提出
  ※申出する会社の本店所在地を管轄する法務局に提出
  ※手数料は無料。郵送による申出も可能
  ※委任による申出も可能

登記所における確認・交付 

1 登記官による確認、実質的支配者リストの保管
   
2 認証文付きの実質的支配者リストの写しの交付
   

利用

実質的支配者リストの写しを銀行等の必要機関に提出します。
※ 必要に応じて、再交付の申出も可能

添付書面について

実質的支配者リストの内容を証する書面

必ず添付する書面

次の①②③のうち、いずれか1つの書面の添付が必要です。

①申出をする日における申出会社の株主名簿の写し
②公証人が発行する申告受理及び認証証明書
 ※設立後最初の事業年度を経過していない場合に限る。
③法人税確定申告書別表二の明細書の写し
 ※申出をする日の属する事業年度の直前事業年度に係るもの

要するに、株主のリストが必要だということですね。

なお、実質的支配者リストの記載と、①②③の書面の記載とで内容が合致しない場合には、その理由を記載した書面(代表者が作成)の添付が必要です。

任意で添付する書面

任意なので、添付しなくてもよいのですが、添付する意味はあります。

次の④⑤の書面を添付した場合には、その内容を、実質的支配者リストの記載事項とすることができるのです。つまり、その記載事項についても、登記官のお墨付きを得たことになるわけです。

そうすると、リストの提出先となる金融機関等においては、実質的支配者リストの記載内容について、信頼性が高まることとなります。
提出する情報が多ければ多いほど、相手方にも信用してもらえるということですね。

④実質的支配者の本人確認書面
 具体的には、次のようなものです。
 ・運転免許証の表裏両面コピー(※)
 ・マイナンバーカードの表面のコピー(※)
 ・在留カードの表裏コピー(※)
 ・特別永住者証明書の表裏コピー(※)
 ・住民票記載事項証明書(住民票の写し) など
 ※原本と相違ない旨を記載し、申出会社の代表者が記名したもの

なお、上記②の書類を添付する場合には、提出不要となります。
なぜなら、②の別紙に含まれる本人確認書面について、④の書面として実質的支配者リストに記載することができるからです。

⑤支配法人に係る実質的支配者の確認書面について、次の書面のいずれか(間接保有の場合)
 ・申出をする日における株主名簿の写し
 ・公証人が発行する申告受理及び認証証明書
  ※設立後最初の事業年度を経過していない場合に限る。
 ・法人税確定申告書別表二の明細書の写し
  ※申出をする日の属する事業年度の直前事業年度に係るもの

なお、実質的支配者リストの記載と、⑤の書面の記載とで内容が合致しない場合には、その理由を記載した書面(代表者が作成)の添付が必要です。

代理権限を証する書面

代理人によって申出をする場合に必要となります。
司法書士に依頼する場合には、司法書士が用意した委任状に記名押印を頂くことになります。

申出会社の代表者の本人確認書面

上記の「任意で添付する書面」の④にも登場した本人確認書面ですが、先ほどのものとは添付する理由が異なります。
こちらは、本人確認を行うための書類として扱われます。

【保管及び写しの交付の場合】
本人確認書面の添付が必要です。
これは、申出会社の代表者の氏名・住所を確認することができるものでなければなりません。
※申出書又は委任状に代表者印が押印されている場合は、添付不要です。

【再交付の場合】
本人確認書面の添付が必要です。
これは、申出会社の代表者の氏名・住所を確認することができるものでなければなりません。
ただし、次のいずれかの場合には、添付不要です。
(1)申出書又は委任状に代表者印が押印されている場合
(2)申出会社の本店の所在場所に宛てて送付する方法により写しの交付を求める場合